現代では、80歳や90歳を超える高齢者が増え、加齢とともに処方される薬の数が増加する傾向があります。しかし、本当にそのすべての薬が必要なのでしょうか?特に、介護施設に入居し、看取りの時期が近づいた高齢者にとって、薬の多さが生活の質にどのような影響を与えているのかを考える必要があります。
高齢者の薬に伴うリスク
高齢になると、薬に対する身体の反応が変化し、副作用が強く現れることがあります。例えば、胃腸障害やふらつきによる転倒のリスク、精神的な混乱などが挙げられます。そのため、薬の「効能」だけでなく、「副作用」を慎重に考慮することが重要です。
また、薬が高齢者の生活にどのような影響を与えるかを見逃してはいけません。特に、食事が生活の中で数少ない楽しみの一つとなっている場合、食事に薬を混ぜる行為が行われると、味覚を楽しむ機会が奪われてしまう可能性があります。このような行為は、人権の問題に発展する可能性もあります。
介護施設と薬の問題
病院での治療は病気の回復を目的としていますが、介護施設は生活の場であり、高齢者がその人らしい生活を送ることを重視する場所です。特に、ユニット型特別養護老人ホームや有料老人ホームでは、「生活の質(QOL: Quality of Life)」が大切にされるべきです。
こうした環境で、本人の同意を得ずに薬を食事に混ぜる行為は問題視されるべきです。高齢者の尊厳を尊重する姿勢が欠けているばかりか、信頼関係を損なう恐れがあります。薬を飲むことに対する本人の意思を無視してまで強制するのではなく、生活環境やケアの在り方を見直すべきでしょう。
尊厳を尊重したケアの重要性
介護において重要なのは、薬を「飲ませること」ではなく、本人の意思や尊厳を尊重することです。そのためには、以下の点を考慮する必要があります。
- 薬の再評価
高齢者の体調や生活状況に応じて、薬の必要性を定期的に見直すことが求められます。場合によっては、薬を減らす「デスプリスクリプション(Deprescribing)」という取り組みも検討すべきです。 - 本人の意思を尊重する対話
高齢者自身が薬に対してどのような考えを持っているのかを聞き取り、納得してもらえる形でのケアを提供することが大切です。 - 生活の質を優先する環境づくり
高齢者が「その人らしく」生活できるよう、施設全体での意識改革や職員への教育が必要です。
結論
高齢者が生活の場で安心して暮らせるためには、薬の管理や投薬に関する見直しが不可欠です。薬を通じて健康を維持することは重要ですが、同時に本人の意思を尊重し、生活の質を最優先する姿勢を忘れてはなりません。介護施設でのケアが「治療」ではなく、「その人らしい生活」をサポートするものになるよう、社会全体での取り組みが求められています。
記合同会社near fam
介護福祉アドバイザー・介護福祉士・保育士
介護のぷーさん